泳ぎ出してすぐ
練習時とはまったく違う現実にぶち当たった。
前後左右、人に囲まれている。
しかも距離が近い‥‥って言うか体がくっついてる!
回した腕が人に当たる。
頭や体をたたかれる。
目の前で人の足がバタバタしている。
後ろから来る奴はのしかかってくる。
端から見ているとシャケのそ上の様に見えただろう。
もしかしてシャケもこんなに苦しい想いをして
川上へ向かっているのかもしれない。
呼吸をする時も周りは水しぶき、
水中も泡で様子を伺うのが難しい。
兎に角人の群れの中で泳いでいる。
所謂、ヘッドアップの泳法は練習できてないので
その厳しい状況のまま泳ぐしかなかった。
スイムのコースは沖へ出てブイを折り返し
戻ってきて750m。これをを2周する1.5キロのコース。
一周目折り返しの手前で
前を泳ぐ人の踵がボクの顔面をとらえた。
「ぬっぐわぁ〜〜〜っ!!!」
言葉にはならない。
. |
. |
顔面にケリを入れられゴーグルがずれた!
痛かったけどそれどころじゃ無い!
水を飲み溺れかける。
まさしく「必死」という言葉を身に染みて感じた。
「死ぬ〜!」と思いながら何とか立て直した。
ゴーグルを元に戻したが
中に海水が入り視界は最悪な状態に‥‥
その後も何度も何度も人にぶつかりながらも
人の流れをたよりに泳ぎ続けた。
この時点でこのレース自体が嫌になっていた。
呼吸も乱れて苦しい。
なんて馬鹿馬鹿しいことをやっんだ!?
もう止めたい。
でも
そこが海でよかった‥‥
あきらめようが無かった‥‥(笑)
そのうち少しづつ気持ちも立て直すことができ、
1周目終了。
. |
|
.陸にあがったところでゴーグルを額に上げ水を切った。
折り返すところで係りの人が
買い物カゴのようなモノを持って立ってる。
あっそうだ!
1周終わった確認として手首にはめていた
白く太い輪ゴムをそこに入れるんだった。
すっかり忘れていた。
「ここに輪ゴムを入れるんですよね」などと
分かりきった質問を係りの人にしながら
輪ゴムをカゴに投げ入れ陸上で折り返し再び海へ。
勢いよく飛び込み泳ごうとした刹那!
あれ!? |
. |
|
ゴーグルが無い!!!
慌てて立ち上がり振り返ると幸運にもゴーグルは
海面にプカプカと浮かんでいた。
こちらの必死さとは対照的に
呑気な感じでプカプカと‥‥
陸に上がった時に額に上げたんだった‥‥忘れてた!
呑気な浮かび方が癇に障り自分の失敗を棚に上げ
「バカたれがー!」と、なんの罪も無いゴーグルに八つ当り。
(ごめんゴーグル君)
乱暴にすくい上げ、素早く付けた。
そして何の迷いも無く再び飛び込み泳ぎ出した。 |
.
つづく
|